
本当のことを書いたのに、なぜ責められるのか。条文を読むと、その理由がはっきり分かります。
相手の名前や写真を、SNSに書き込む。あるいは、職場に伝わるように投稿する。
気持ちは分かります。ただ、本当のことを書いても罪に問われ得るのが、この分野の特徴です。
条文に、はっきり書かれています
刑法第230条は、こう定めています。「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」。
「その事実の有無にかかわらず」。ここが要点です。書いた内容が真実であっても、名誉毀損は成立し得ます。
事実を示さずに、公然と人を侮辱した場合も、侮辱罪として1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留・科料の対象になります(第231条)。

「公益のため」は、通りません
第230条の2に、例外の定めがあります。
公共の利害に関する事実であり、目的が専ら公益を図ることにあり、真実であることが証明された場合には罰しない、というものです。
ただ、個人の不倫は、通常「公共の利害に関する事実」には当たりません。目的も、公益ではなく個人的な感情であることがほとんどです。この例外に当てはまるのは、まれです。
民事でも請求される
刑事だけではありません。
名誉を傷つけられた側は、民法第709条・第710条に基づいて、慰謝料を請求できます。実際、不倫をした側が、晒されたことを理由に請求してくるという展開は起きています。
こちらが請求する立場だったはずが、相殺されてしまう。あるいは、相手の請求のほうが大きくなる。そうなると、何のために動いたのか分からなくなります。
消しても、残ります
もう1つ、実際的な問題があります。
投稿を消しても、それを見た人の記憶と、保存された画面は残ります。相手の手元に、こちらを責める材料が残るということです。
話し合いの場で、それが出てきます。「あなたもこういうことをした」と。そこから先、対等な話ができなくなります。
書きたくなったときに、できること
では、この気持ちをどうするか。
書いてください。ただし、公開しない場所に。紙のノートでも、誰にも見せないメモでも構いません。出す先を変えるだけで、気持ちの整理としては同じ効果があります。
そして、日付を入れておいてください。あとで、そのときの状況を思い出す手がかりになります。
伝えるべき相手は、別にいる
相手に知らせたい、周りに知ってほしい。その気持ちの行き先は、SNSではありません。
不倫の事実を伝えるべき相手は、限られています。相手方本人、その配偶者、弁護士。この範囲であれば、正当な理由のある伝達として扱われます。
順番と相手を間違えなければ、伝えたいことは伝わります。急いで公開する必要は、ありません。
相手の側が晒してくることもある
逆の場面も書いておきます。
こちらが動き始めたあと、相手やその関係者が、こちらのことを書き込むことがあります。ここで、やり返さないでください。
やることは2つです。1つ、画面を保存する。日付とURLが分かる形で残します。2つ、返信しない。
保存しておけば、あとで請求の材料になります。返信すれば、こちらも同じ土俵に立つことになります。
削除を求める方法
書き込まれたものを消したい場合、手続きがあります。
サービスの運営者に削除を申し入れる方法、発信者の情報開示を求める方法があります。いずれも、証拠の保存が前提です。消えてしまってからでは、申し立てられません。
この分野は弁護士の仕事になりますので、こちらから直接お手伝いすることはできません。ただ、どこに相談すればよいかは、お伝えできます。
いずれにしても、まず保存です。腹が立って画面を閉じてしまいたくなりますが、そこだけは押しとどめてください。
よくあるご質問
名前を出さなければ、書いてもいいですか。
名前がなくても、周囲が誰のことか分かる書き方であれば、同じ問題が生じます。特定できるかどうかが基準です。
相手の職場に伝えるのは、どうでしょうか。
目的と伝え方によります。慰謝料請求のために必要な範囲を超えると、別の問題になります。弁護士を通す形が安全です。
相手の配偶者に知らせるのは、問題ありませんか。
配偶者には、その方自身の請求権があります。伝えること自体は正当な理由が認められやすい場面ですが、伝え方には注意が要ります。
条文の引用は、最新のものですか。
条文が改正されたときは、書き直しています。個別の判断は、弁護士にご確認ください。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
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