
広告では手軽に見えます。ただ、入れた側が罪に問われる可能性があります。何が問題なのかを整理します。
相手のスマホの中身が見えるという触れ込みのアプリが、いくつも売られています。
広告は簡単そうに見えます。ただ、入れた側が問われる可能性のある法律が、複数あります。順に見ていきます。
1 不正指令電磁的記録に関する罪
刑法第168条の2に、この罪があります。いわゆるウイルスに関する罪です。
条文は、「正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で」、使用者の意図に反する動作をさせる不正な指令を与える電磁的記録を作成・提供・供用した者を罰しています。
罰則は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
相手が知らないうちに動き、位置や通信の内容を外に送るような仕組みは、この「意図に反する動作」に当たると評価される余地があります。

2 不正アクセス禁止法
アプリを入れるために、相手のIDやパスワードを使ってログインした場合は、こちらも問題になります。
不正アクセス行為の禁止等に関する法律の第3条が、不正アクセス行為を禁じています。罰則は3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(同法第11条)。
さらに、その用に供する目的で他人の識別符号を取得した場合も、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(同法第4条・第12条)。
3 プライバシーの侵害
刑事の話とは別に、民事の問題があります。
無断で通信の内容や位置を継続的に取得する行為は、民法第709条の不法行為として、損害賠償の対象になり得ます。
つまり、慰謝料を請求しようとしていた側が、逆に請求される立場になることがあるということです。
なぜ、これほど強く止めるのか
法律の話を並べましたが、実務でいちばん困るのは別の点です。
そうして得た情報は、使えません。話し合いの場に出せば、こちらのやったことが問題になります。弁護士に持ち込んでも、使わないほうがよいと言われます。
結果として、リスクだけを負って、何も得られないということが起きます。
見えている範囲でできること
「では、どうすればいいのか」という話をします。
相手の端末に手を入れなくても、外から見える情報はあります。帰宅の時刻、持ち物、車の使い方、予定の断り方。ここまでは、誰の権利も侵さずに集められます。
そして、そこから先は、法律の範囲でこちらが引き受けます。人が見て、記録する。地道ですが、そうして得たものは、そのまま使えます。
手軽な方法に見えるものほど、あとで高くつきます。これは、脅しではなく、実際に起きていることです。
広告の書き方に、注意してください
この種のアプリの広告には、いくつか決まった言い回しがあります。
「合法」「家族の見守り」「本人の同意があれば」。最後のものが要点で、同意があれば適法、というのは、裏を返せば同意がなければ違法だということです。
広告を読むときは、その条件が自分の場面に当てはまるかを見てください。ほとんどの場合、当てはまりません。
また、海外の事業者が提供しているものは、日本の法律に合わせて作られていないことがあります。使う側の責任は、使う側に残ります。
入れたことは、たいてい分かります
技術的な話を1つ。
この種のアプリを入れると、端末の動きに変化が出ます。電池の減りが早くなる、通信量が増える、動作が重くなる。気づかれる可能性は、決して低くありません。
気づかれたとき、相手は端末を初期化します。そして、こちらがやったことを材料として持ちます。
得られるものと失うものを並べると、まったく釣り合いません。だから、強く止めています。
すでに入れてしまわれた方は、責めることはしませんので、そのまま話してください。前提を共有できていれば、そこから組み立て直せます。
よくあるご質問
家族の位置を共有するアプリは、問題ありませんか。
相手が承知して設定したものなら問題ありません。問題になるのは、知らせずに入れた場合です。
子どもの端末を見守るアプリはどうですか。
未成年のお子さんの端末について、保護者が監護のために設定する場合は、事情が異なります。配偶者の端末とは分けてお考えください。
すでに入れてしまいました。どうすればいいですか。
まず削除してください。そのうえで、そこから得た情報は使わない形で組み立て直します。正直にお話しいただければ、それを前提に進めます。
ここに書かれた条文は、いまも同じ内容ですか。
条文が改正されたときは、そのつど書き直しています。判断に迷われる場面では、お問い合わせください。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。