
事実であっても、伝え方によっては責任を問われることがあります。職場に連絡してしまう前に、知っておいていただきたいことです。
調査の結果、不貞の事実が確認できたあと、相手の職場に連絡してしまう方が、時どきいらっしゃいます。
報告を受けた直後は、感情が大きく動きます。誰かに聞いてほしい、知らせたいという気持ちが強くなるのは、自然なことです。ですが、その勢いのまま行動する前に、少し時間を置いていただきたいです。
気持ちは分かります。ですが、これは、あとで自分の立場を悪くしてしまう行動の一つです。
事実でも、責められること
名誉毀損という言葉を、聞いたことがあるかもしれません。刑法230条では、事実の有無にかかわらず、名誉を傷つける内容を不特定または多数に伝えると成立するとされています。
「本当のことなら問題ない」と考える方は多いのですが、この法律はそのようには作られていません。
本当のことを言っただけなのに、罪に問われるのはおかしい。そう感じる方は多いです。ですが、法律上はそうなっていません。
名誉毀損という考え方
職場の上司や同僚に、「不倫をしている」と伝える行為は、内容を知る人が複数になった時点で、成立の対象になり得ます。
一人にだけ話した場合と、複数人に話した場合とでは、成立のしやすさも変わってきます。
家族にだけ相談した、という場合であれば、事情はまた変わってきます。伝える相手の範囲が、判断の分かれ目になります。

刑法230条の2には、公共の利害に関する場合の特例もありますが、私的な不貞関係が、これに当たると認められることは、まずありません。
会社にとって不利益になる情報だから公表した、という理屈も、私的な不貞関係には当てはまりにくいです。業務に直接関わらない私生活の話は、公共の利害とは区別されます。
法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。民事の損害賠償を、あわせて請求される可能性もあります。
故意でなくても、うわさとして広めてしまった場合に、成立することもあります。自分では軽い一言のつもりでも、聞いた側の受け取り方によって、広がり方は変わります。
伝える前に、立ち止まる場所
腹立たしい気持ちがあるほど、誰かに知らせたいという衝動は強くなります。それ自体は、自然な感情です。
ただ、伝えた瞬間から、責任は伝えた側にも生まれます。それが、この問題の難しいところです。
職場に伝える前に、まず弁護士に相談し、慰謝料請求など、正式な手続きに乗せる方法を検討することをおすすめします。
慰謝料請求という正式な形にすれば、感情に任せるより確実に、相手の責任を問うことができます。
弁護士を通すことで、直接のやり取りを避けられるという利点もあります。
話した内容を、忘れないうちに
職場に何かを伝えてしまったあとであれば、次のことを記録しておいてください。
記憶が新しいうちに、できるだけ具体的に書き出しておいてください。
・9月2日(水)10時、上司に口頭で不貞の事実を伝えた。
・9月2日(水)15時、同僚数人にも同じ内容を話した。
・9月3日(木)、社内で噂になっていると本人から聞いた。
誰に、いつ、何を話したか。これは、弁護士に相談する際に、そのまま必要になる情報です。
ここから先は、弁護士の領域
この段階で、私にできることは、事実関係の確認と、記録の整理をお手伝いすることです。
相手や、相手の勤務先と直接やり取りして、話をつけることは、私にはできません。報酬を得て行う交渉は、弁護士法72条により弁護士の仕事と定められています。ここから先は、弁護士に委ねる場面です。
名誉毀損に当たるかどうかの判断や、伝えてしまったあとの対応は、弁護士の領域になります。だからこそ、伝える前の一呼吸が大切です。早めに相談することをおすすめします。
よくあるご質問
事実を話しただけでも、罪になるのですか。
なる場合があります。刑法230条は、事実かどうかにかかわらず成立するとされているため、慎重に考えたほうがいいです。
すでに職場に伝えてしまいました。今からできることはありますか。
誰に何を話したかを記録した上で、早めに弁護士へ相談してください。対応が早いほど、選べる手段が残ります。
SNSに書くのも、同じ問題になりますか。
なり得ます。不特定多数が見られる場に書く行為は、より成立しやすいと考えられているため、避けたほうがいいです。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。