
短くしよう、聞きやすくしようとした編集が、証拠としての価値を落とすことがあります。その理由を書きます。
「長すぎるので、必要な部分だけつないでおきました」。録音のデータを見せていただくときに、時どきこう言われることがあります。
良かれと思っての作業だというのは、よく分かります。ただ、その時点で、録音が持っていた価値の多くが失われていることがあります。
つないだ瞬間に生まれる疑い
録音を編集すると、ファイルの構造そのものが変わります。元のデータと同じものだと、あとから示すことが難しくなります。
相手側の立場に立てば、都合の悪い部分を削ったのではないか、という疑いを持つのは自然なことです。悪気がなくても、その疑いは生まれてしまいます。
一度そう思われると、録音全体の信用に影響します。本当に大事だった数十秒のために、全体が疑われてしまうのは、もったいないことです。
編集したくなる理由も、分かります。関係のない世間話や、聞かれたくないやり取りが、同じ録音の中に入っていることがあるからです。気持ちは分かりますが、その部分ごと、判断は専門家に委ねたほうが安全です。

誰かに渡すときも、そのまま
弁護士や調査の専門家に録音データを預けるときも、考え方は同じです。渡す前に自分で選別せず、まずは元のファイルのまま渡してください。
どの部分が重要かは、渡された側が全体を聞いてから判断します。依頼者の側で先に切り取ってしまうと、判断の材料そのものが減ってしまいます。
恥ずかしい部分や、関係のない話が混ざっていても構いません。専門家は必要な範囲だけを取り出して扱いますので、抱え込まずに渡していただいて大丈夫です。
長さと編集は、別の問題
「長くて聞きづらいから」という理由は、よく分かります。ただ、聞きやすさと、証拠としての完全さは、別の問題です。
聞きやすい形にしたいのであれば、元のファイルには触れず、別に文字起こしやメモを作る方法があります。元のデータには、いっさい手を加えない。これが基本です。
機種が変わると、さらに難しくなる
スマホを機種変更した際に、録音アプリを変えてしまい、ファイル形式が変わってしまうこともあります。日時の情報が失われることもあります。
こうした情報は、あとから復元するのがとても難しいです。撮った時点の状態を、そのまま動かさないことが、一番の対策になります。
機種変更を予定しているときは、その前に、これまでの録音データをまとめて外部の媒体に移しておくといいです。移し替えの作業そのものでも、開き直したり保存し直したりする際に日時の情報が変わることがあるので、慎重に行ってください。
編集する前に、残しておく3行
録音そのものには触れない代わりに、簡単な記録を別に残しておくと、あとで見返すときの助けになります。
・9月3日(木) 21時14分 会話を録音開始
・9月3日(木) 21時38分 録音終了、そのままスマホ内に保存
・9月4日(金) 8時 バックアップとしてパソコンにコピー(未編集)
日付と曜日と時刻だけを書いておくのがこつです。感想は書き込まなくて構いません。あとで見返したときに、いつの録音か、編集していないかが、これだけで分かるようになります。
ここまでは、お手伝いできます
録音の保存の仕方について、ご相談いただければ、一緒に確認することはできます。
一方で、相手の通話記録を確認することや、相手に直接会って録音の件を問いただすことは、私のところでは行っていません。後者にあたる交渉ごとは、弁護士法72条により、弁護士以外が報酬を得て行うことができない決まりです。録音の扱い方を一緒に考えることと、相手と話をつけることは、まったく別の仕事だと考えています。
できることとできないことを、最初にはっきり分けてお伝えするようにしています。曖昧なまま進めると、あとで期待とのずれが生じやすいためです。
よくあるご質問
一度つないでしまった録音は、もう使えませんか。
使える場合もありますが、編集前の元データが残っているかどうかが大きく関わります。まずは元のファイルが手元にあるかを確認してください。復元できる場合もあります。
文字起こしを作るのは問題ないですか。
問題ありません。元の録音データには手を加えず、別のメモとして文字起こしを作る分には、証拠としての価値を損ないません。
バックアップは何か所くらい取ればいいですか。
決まりはありませんが、スマホとパソコンなど、2か所程度に未編集のまま保存しておくと安心です。クラウドへの保存を併用する方もいます。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。