
自分で録音するときと、他人の会話を録るときとでは、法律上の位置づけが違います。整理して書きます。
「録音をしてもいいのでしょうか」という質問を、よくいただきます。答えは、状況によって変わります。ここでは考え方の筋道だけを書きます。
まず分けて考えたいのは、自分がその場にいる会話を録るのか、自分がいない場所での会話を録るのか、という点です。
自分の会話を録る場合
自分自身が参加している会話を録音することは、一般的には大きな問題にならないと考えられています。自分が聞いた内容を、自分の手元に残しているだけだからです。
職場の面談や、家族との話し合いを録音しておきたい、というご相談を受けることがありますが、この形であれば、まず心配し過ぎなくてよい場合がほとんどです。
自分がいない場所の会話を録る場合
一方で、自分が関与していない会話を、こっそり録るケースは事情が変わります。方法によっては、別の法律に触れることがあります。
例えば、録音機を仕掛けるために無断で相手の家に入れば、住居侵入として刑法130条の対象になり得ます。
相手のスマホやパソコンに無断でアクセスして、録音データを取り出すような行為は、不正アクセス禁止法3条・11条に触れる可能性があります。

取り付け方にも注意がいる
相手の車や持ち物に小型の機器を取り付けて、居場所や会話を継続的に把握しようとする行為は、恋愛感情や怨恨の目的がある場合、ストーカー規制法2条3項に触れることがあります。目的の有無が要件になっている点は、覚えておいてください。
違法にならない場合でも、録った内容の使い方によっては、プライバシーの侵害として民法709条・710条に基づく賠償の対象になることもあります。適法かどうかと、トラブルにならないかどうかは、別の話です。
録音だけに頼らない
たとえ適法に録れた録音であっても、それだけがすべてを語ってくれるとは限りません。日時のメモや、他の記録とあわせて初めて、状況が伝わりやすくなります。
録音は、いくつかある材料の一つとして扱うのがちょうどいいです。録れているかどうかにばかり気持ちを集中させず、周辺の記録もあわせて残しておくことをおすすめします。
会社でのハラスメント相談のように、繰り返し行われるやり取りを録音する場合も、1回きりで終わらせず、日付ごとに区切って残しておくと、あとから経緯をたどりやすくなります。
一つの長い録音にまとめてしまうより、日ごとにファイルを分けておくほうが、あとで該当箇所を探しやすいという利点もあります。探しやすさも、記録の価値のうちだと考えています。
迷ったときほど、記録を
録音の適法性で迷ったときほど、いつ、どこで、どういう状況で録ったかを記録しておくと、あとで判断の材料になります。
・9月5日(土) 10時 自宅リビングで、自分が参加する会話として録音
・9月5日(土) 10時22分 録音終了、日時を控えてファイル名を変更
・9月6日(日) 相談前に状況をメモに整理
こうした記録があると、あとから弁護士や専門家に相談する際に、状況を正確に伝えられます。記憶だけに頼ると、細部から崩れていきます。
判断するのは、弁護士の役割
録音の位置づけについて、一緒に整理することはできます。ただし、個別の状況が適法かどうかを最終的に判断するのは、弁護士の役割です。
私のところで対応できないのは、相手の口座や通話記録を調べることと、相手と直接交渉することです。交渉ごとは弁護士法72条により、弁護士だけに認められた役割です。適法かどうかの最終的な判断も、私ではなく弁護士が行います。
法律は改正されることがあります。ここに書いた内容も、変わった際には書き直しています。
よくあるご質問
こっそり録音した内容は、裁判で使えますか。
使える場合もありますが、最終的な判断は裁判所によります。取得方法に問題がなかったかどうかが、大きく関わってきます。迷う場合は弁護士に確認してください。
相手の車にレコーダーを付けても大丈夫ですか。
目的や状況によっては、ストーカー規制法に触れる可能性があります。安易に取り付けることは避け、事前に相談されることをおすすめします。
法律が変わったら、この記事の内容も変わりますか。
はい。条文や解釈が変わった場合は、内容を書き直すようにしています。読まれた時期によって、最新の状況をあわせて確認していただけると安心です。判断に迷う場合は専門家にも相談してください。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。