
口約束で終わらせず、公正証書にしておく意味を書きます。払われなくなったときに、効いてくる違いです。
慰謝料や養育費について、話し合いがまとまったあと、「書面にするかどうか」で迷う方がいます。
口約束でも、決めたこと自体は有効です。ただ、あとになって効いてくる違いが、公正証書にはあります。無事に払われている間は、その違いに気づきにくいものです。
決めたことと、払われなくなったとき
公正証書は、公証役場で公証人が作成する書面です。当事者だけで作った合意書と違い、内容の正確さや、本人の意思であることが、公的に確認された形になります。
「言った、言わない」の水掛け論になりにくいというのが、まず一つの意味です。
分割払いを選ぶときも
分割払いで慰謝料や養育費を受け取る取り決めをする方は、少なくありません。回数が多くなるほど、途中で止まってしまうリスクも上がります。分割払いを選ぶときこそ、公正証書にしておく意味が大きくなります。
毎月の振込を、何年にもわたって続けてもらう約束は、口約束だけでは形が残りにくいものです。書面があることで、支払う側の意識も変わることがあります。作成の手間を惜しまないほうがいい理由は、ここにあります。
一番大きな違いが表れるのは、決めた通りに支払われなくなったときです。
「強制執行認諾」の文言を入れた公正証書であれば、裁判を起こさずに、相手の給与や財産を差し押さえる手続きに進むことができます。普通の合意書だと、まず裁判で認めてもらう手続きから始めなければなりません。

財産分与には期限がある
離婚の際の財産分与について、家庭裁判所に申し立てられる期限は、離婚のときから5年です。民法768条2項ただし書に定められています。2024年の法改正で、それまでの2年から延びました。
期限があること自体を知らずに、時間だけが過ぎてしまうケースもあります。早めに書面にしておく意味は、ここにもあります。

公正証書だけでは防げないこと
公正証書があれば安心、というわけでもありません。相手にそもそも差し押さえられる給与や財産がなければ、手続きを進めても回収できないことがあります。
書面の強さと、実際に払われるかどうかは、別の問題です。過度な期待はせず、一つの備えとして考えていただくのがいいと思います。
相手の勤務先や資産の状況が変わっていないかを、支払いが滞る前に把握しておくことも、備えの一つになります。滞ってからでは、動ける範囲が狭くなることもあります。
合意から入金までを、3行で
公正証書を作る前後のやり取りは、次の3つを残しておくと、あとで役立ちます。
・9月3日(木) 相手と養育費の金額について合意
・9月10日(木) 公証役場に予約の電話をする
・9月20日(日) 予定していた振込日、入金を確認
いつ合意し、いつ手続きをして、実際に支払われたかどうかを、日付だけで残しておいてください。支払いが止まったときに、経過が一目で分かるようになります。
証書を作るのは、私の仕事ではありません
支払いが止まったあとの事実関係を確認したり、記録を整理したりすることは、私のところでもお手伝いできます。
公正証書の作成そのものと、相手との交渉ごとは、私のところでは行っていません。弁護士や公証人の役割であり、交渉については弁護士法72条もかかわってきます。戸籍や住民票を取り寄せることも、同じく私の仕事ではありません。
書面を作るところまでは専門家に、その後の事実確認は必要に応じて私のところに、と分けて考えていただくのがいいと思います。相手の状況によって進め方も変わりますので、まずは経緯を伺うところから始めます。
よくあるご質問
公正証書は自分たちだけでも作れますか。
公証役場に出向いて手続きを行えば作成できます。ただし内容の整え方は専門的なので、弁護士に相談してから臨む方が多いです。案文を作る段階から頼む方もいます。
支払いが止まったら、すぐ差し押さえできますか。
強制執行認諾の文言が入っていれば、裁判を経ずに手続きに進めます。文言がない場合は、まず裁判所の手続きが必要です。相手の勤務先が分かっているかどうかも重要です。
財産分与の期限を過ぎたらどうなりますか。
離婚から5年を過ぎると、家庭裁判所への申し立てができなくなる可能性があります。早めに弁護士へご相談ください。期限は意外と早く来ます。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。