
公道での撮影は、そのまま違法になるわけではありません。受忍限度という考え方を書きます。
望遠レンズを構える前に、聞かれることがあります。「これは、盗撮になりませんか」。
答えは、場面によります。公道で人を撮ることが、そのまま違法になるわけではありません。ただし、無制限でもありません。
肖像権という考え方
肖像権という言葉は、法律の条文に直接書かれているものではありません。
裁判の積み重ねの中で認められてきた、人格に関わる権利です。
無断で撮影され、公表されることについて、人には拒む権利がある。おおまかに言うと、そういう考え方です。
この権利が侵害されたと判断されると、民法709条の不法行為にあたります。
710条にもとづく損害賠償の対象になり得ます。
特別な条文があるわけではなく、一般の原則にもとづいた考え方です。
芸能人やスポーツ選手だけの話ではありません。誰にでも、同じように認められている権利です。
顔がはっきり分かる写真ほど、慎重な扱いが求められます。
受忍限度という物差し
では、どこまでが許されるのか。裁判所が使う物差しの一つが、受忍限度という考え方です。
撮られた側が、社会生活の中で我慢すべき範囲を超えているかどうか。
これを、状況ごとに個別に判断します。
誰を撮ったか、どこで撮ったか、何のために撮ったか、どう使ったか。これらを総合して考えます。
同じ距離、同じ枚数の写真でも、目的が違えば評価も変わってきます。
撮影の頻度や、相手にどれだけ近づいたかも、判断材料に含まれます。
1回だけの撮影と、日常的に繰り返される撮影とでは、受け止められ方が変わってきます。
近づいて撮るほど、プライバシーへの踏み込みが大きいと判断されやすくなります。

公道での撮影について
公道は、誰でも通れる場所です。そこにいる人の姿が写り込むこと自体は、日常でも起きています。
街のスナップ写真や、観光地の記念写真にも、通りすがりの人が写り込むことがあります。
監視カメラの映像に写り込むことも、日常の中では珍しくありません。
調査の場面では、対象者の行動を確認する目的で、必要な範囲を撮ります。
不特定多数に公表する目的の撮影とは、性質が違います。
同じ「撮る」という行為でも、目的と使い方によって評価が変わってきます。
SNSへの投稿との違い
SNSに他人の写真を無断で載せることと、調査のための撮影は、目的も扱いも別のものです。
公表しないことを前提に記録するのと、不特定多数に見せるために撮ることとでは、リスクの大きさが違います。
撮影者の意図が「見せるため」なのか「確認のため」なのかも、大きな分かれ目になります。
投稿してしまった写真をあとから消しても、すでに広まっている場合があります。投稿前の判断が大事です。
ご自身が誰かを撮ってSNSに載せたい場合は、写っている人の許可を取るのが基本です。
調査における撮影の考え方
こちらで行う撮影は、報告書に使うためのものです。日時と場所と行動が分かる範囲にとどめます。
不特定の第三者に見せる目的では撮りません。使い道を、あらかじめ限定しています。
望遠レンズを使うのは、離れた場所からでも行動が確認できる状況に限っています。
私有地の中に立ち入って撮ることはしません。この点は、別の記事でも詳しく書いています。
撮影した写真は、報告書を読む依頼者と弁護士以外の目に触れないよう管理しています。
撮影の枚数も、必要な範囲にとどめます。むやみに多く撮ることはしません。
報告書に使わなかった写真は、期間を決めて処分しています。
撮影に関するルールは、時代とともに少しずつ変わってきました。
スマホが普及したことで、誰もが撮る側にも撮られる側にもなり得る時代です。
だからこそ、撮る側にも一定の節度が求められると考えています。
調査における撮影も、その節度の延長線上にあります。
目的を外れた撮影は、依頼者の利益にもつながりません。
報告書に必要な写真だけを、必要な分だけ撮る。それが基本の姿勢です。
迷ったときは、撮る前に一度立ち止まって考える習慣を、私自身も大切にしています。
この考え方は、依頼者の証拠を守ることにもつながっています。
撮影の判断に迷う場面があれば、遠慮なくご相談ください。
よくあるご質問
街で誰かに撮られても、写真を消させることはできますか。
場合によります。撮影の目的や公表の有無によって判断が変わるので、まずは状況を整理して弁護士に相談することをおすすめします。
調査の写真は、裁判で使えますか。
使われることが多いです。ただし最終的な判断は裁判所が行います。撮影の方法や記録の仕方が問われます。
法律の解釈は変わることがありますか。
あります。この記事は2026年時点の考え方をもとに書いています。変わった場合は、内容を書き直します。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。