
配偶者と相手方、慰謝料はどちらにどう請求できるのか。民法719条の考え方を書きます。
不貞の慰謝料を考えるとき、請求できる相手は1人とは限りません。配偶者と、その相手方。民法719条は、この2人の関係を「共同不法行為」として扱います。言葉は硬いですが、考え方自体は難しくありません。
連帯するとはどういうことか
共同不法行為にあたると、配偶者と相手方は、それぞれが損害の全額について責任を負います。これを連帯責任といいます。2人の行為が1つの損害を生んだ、という考え方が土台にあります。
「2人で半分ずつ」ではありません。どちらか一方に全額を請求することもできますし、双方にそれぞれ請求することもできます。請求の仕方に、決まった型があるわけではありません。
資力のある側にまとめて請求する、というやり方が選ばれることもあります。誰にどう請求するかは、状況によって変わります。判断に迷う場合は、早めに弁護士へ相談してください。

二重には取れない
ここが、誤解されやすいところです。損害そのものは1つですから、配偶者から全額を受け取った場合、相手方に重ねて同じ損害分を請求することはできません。
一方から一部を受け取った場合は、残りの部分を、もう一方に請求できる余地が残ります。実際の金額の調整は、事案ごとに変わります。
この考え方を知らずに、相手方からも配偶者からも全額を受け取れると思い込んでしまう方が、実際にいらっしゃいます。誤解したまま話を進めると、あとで訂正が必要になります。早い段階で正しく知っておくと、遠回りせずに済みます。
時効にも注意する
慰謝料の請求権にも、期限があります。民法724条により、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で消えるとされています。
共同不法行為であっても、この期限は変わりません。相手方の存在に気づいた時期によっては、期限が近づいていることもあります。心当たりがある場合は、早めに専門家へ相談してください。
なぜこの仕組みがあるのか
被った精神的損害は、金額として1つに定まるものです。誰から、いくら受け取ったかを積み上げていって、合計が損害額を超えないようにする。それが、この条文の考え方です。
逆に言えば、この仕組みがあるおかげで、相手方が「配偶者にはもう払わせたはずだ」と主張しても、請求そのものが消えるわけではありません。すでに支払われた分が、金額の調整に反映されるだけです。

実務で気をつけること
示談や合意書を交わす際は、「この金額で、他方への請求権をどう扱うか」を明記しておくことが大切です。書き方によって、あとの請求に影響します。
金額の計算や書面の作成は、弁護士の領分です。私にできるのは、請求の材料となる事実関係を、記録として整えることです。
相手方の特定が済んでいないと、そもそも請求先が定まりません。事実関係を先に固めておくことが、結果として法律の手続きを助けます。
氏名や住所が分からないままでは、書面を送ることもできません。順番としては、事実の記録が先、金額の交渉があとになります。焦って金額の話から進めても、うまくいきません。
裁判ではなく話し合いで決める場合
実際には、裁判までいかず、示談で終わることも多くあります。示談であっても、719条の連帯という考え方は前提として働いています。
示談書に、どちらがいくら支払うか、他方への請求権をどう扱うかを明記しておけば、あとになって蒸し返される可能性を減らせます。書面にしておくことの意味は、ここにあります。
よくあるご質問
配偶者と相手方、どちらに先に請求すればいいですか。
決まりはありません。資力や、話し合いのしやすさなど、状況に応じて弁護士と相談しながら決めることが多いです。順番より、事実関係の整理が先です。
相手方が「自分は独身だと聞いていた」と主張しています。
事情によって結論が変わる論点です。判断は裁判所や弁護士の領分になりますので、分かっている事実関係を整理してお伝えください。
法律は変わることがありますか。
あります。この記事は現行の民法をもとに書いていますが、条文が変わった場合は内容を書き直しています。最新の内容は弁護士にもご確認ください。
相談だけで終わって、大丈夫です。話を聞いた私が、そのまま夜の現場に出ます。
お電話は9時から21時まで受け付けています。最初の一言は「相談したい」だけで構いません。